スペシャル

あなたにとっての
民藝とは?

本展開催によせて、
メッセージをいただきました。

  • © Maetani Kai

    Tezzo Nishizawa

    本展の
    展示デザインを
    しています。

    西澤徹夫

    建築家

    民藝運動は、民衆の芸術を一望したいという欲望、すべての人間の営みを総覧したいという壮大な野望にも思えます。しかし論理的にはそれらの蒐集には際限がないから、むしろ個々の品物に内在する価値を越えて、圧倒的で不確かな全体像を民藝の名においてまるまるつくりあげた、ということが、そして今に至るまでさまざまな品物がその一覧の中に加え続けられているということが、この概念の強度だと思います。だから民藝運動がそれまでまったくなかった「美しさ」を発見したこと、またその広げられた価値観のなかにいまだ僕たちの創作や生活が含まれてしまっている、あるいはそれが今や当たり前の世界になっているということに、あらためて驚嘆するばかりです。

  • Akito Akagi

    赤木明登

    塗師

    倉敷民藝館の近くで育ち、民藝はいつも身近にあった。子どもの頃は意味もわからず収集品の雰囲気に親しんでいた。大人になって柳の本を読み、民藝のことが一度わからなくなった。「用と美」が、なぜ結びつくのかがわからないのだった。それから柳の文章を読み込んで、ある結論に辿りつく。民藝は、いま私たちが現実に生きている世界、所謂「現生」の外部に、美の根拠となる「浄土」を設定する。現生と浄土の往還によって美はもたらされるのだ。この超越性を理解しなければ、柳民藝はわからない。このアイデアそのものが、近代化によって疎外されたものなのだが、工藝の原点には、いまだその超越的な理念が息づいていることをぼくは知っている。

  • Yoshiharu Doi

    土井善晴

    料理研究家

    料理人を目指していた私が家庭料理の先生の道を余儀なくされたとき、身を落とした、と、感じたことは単なる未熟でした。思い悩む私は河井寬次郎記念館で人間の暮らしと一致する仕事から生まれた民藝美を観て、「家庭料理は民藝だ」って発見したのです。それからはずっと家庭料理を民藝と重ねて考えてきました。そこには、ひたむきな、つつましい、自由な、元気な、希望の世界がありました。家庭料理と民藝は、姉妹のような関係で、そばにいるだけで安心です。家庭料理とは風土の暮らしに生まれた純粋料理です。民藝は地球と人間の手をつなぐ純粋工芸です。おかげさまで、今では、身近にある物の意味を感じ、心地よさにつつまれ、たいそう幸せです。

  • © 片岡杏子

    Itaru Watanabe

    渡邉格

    タルマーリー 代表

    私は鳥取県智頭町で、自然界から野生の菌を採取して発酵させる伝統製法で、パンとビールを作っている。
    一方で現代では、西洋で開発された純粋培養菌による発酵が一般的であり、確かに、菌や素材の動きを止めることで工業的な大量生産が可能になっている。しかし私が職人として感じる伝統製法の魅力は、野生の菌と歩調を合わせて、素材の生命力を最大限引き出すために力を尽くすことだ。私はそれを「動的なモノづくり」と名付け、発酵によってこの地域ならではの表現ができることに、大きな喜びを感じている。私にとって民藝とは、自然界の活き活きとした躍動感と共に、その地域独特の動的な個性を引き出すモノづくりのことだと思っている。

  • 落合陽一
    © 蜷川実花

    Yoichi Ochiai

    落合陽一

    メディアアーティスト

    民藝性について考えていた。研究者でメディアアート作家の自分においての民藝とはなんだろう。柳宗悦が挙げた伝統性・他力性・地方性のようなものはデジタルテクノロジーと作家性の間の均衡にもみられるような気がする。「物化(Transformation of Material Things)」をテーマに作品作りをする自分にとって、「無心の美」「自然の美」というのはデジタルが自然化し、デジタルテクノロジーが異物ではなく自然風景の一部と捉えられていく過程で我々が今後獲得していくものだと思う。プラットフォームに寄与するのでなく、詩的に作品を作っていくときの技術と芸術の交流点というものは、機械を使いながらも手仕事に近い領域のように感じながら、今日も作品を作っている。

  • Akiko Kikuchi

    菊池亜希子

    女優・モデル

    私の祖父は、風来坊のような人だった。ふらりといなくなり、お土産をぶらさげふらりと帰ってくる。実家にあったガラスの戸棚には、祖父が旅先で買ってきたあらゆるものが並んでいた。それはちょっといびつな器や、張り子の人形だったりするのだけど、そこに並ぶバラバラなものたちは、不思議とみんな仲良く寄り添って佇んでいた。“民藝”と聞くと、私はあのガラス棚を思い出す。そして気づけば私もまた、祖父と同じように旅をして、あらゆるものを連れ帰っている。そこにあるのは、きっと憧れだ。使うたび、ここではないどこかの匂いを感じ、同時に今ここにある暮らしを丸ごと抱きしめたくなる。私にとって民藝とは、生活への憧れなのだと思う。

  • Ryo Yamazaki

    山崎亮

    studio-L 代表

    有名なデザイナーになりたいと望んでいた頃、誰も思いつかないようなアイデアを、真似できない方法で実現させようと躍起になっていた。コミュニティデザイナーとして地域住民とともに活動するようになってからは、生活者が発想したアイデアを、仲間とともに実現させ、多くの人が丁寧に真似してくれることを願うようになった。発想した人が有名である必要はないし、実現させた人が手柄を独占することもない。そんなプロジェクトこそが偉大なのだと教えてくれたのは、民藝の思想と実践である。

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